タイトルどおり、好意を持った男女が「ごはんを一緒に食べるだけ」でとどまる話だと思っていた。実際は、しっかり不倫のドラマだった。
澤田タキと斎藤レイは、料理教室の先生と編集者で雑誌の仕事を通して食事に対する思いが同じと確信する。タキとレイは、この2人なら一緒にいて幸せになれるのでは?と思っていた。
それでもそれぞれにパートナーがいる。それを捨てて一緒になることはできないと、自制していた。タキは、レイと会わずに雑誌に料理の記事を載せる方向で仕事を続けようとする。
けれど別れ際、思いが溢れてしまう。2人が玄関で抱き合っているところに、タキの夫・カズが帰ってくる。「人のうちで何してるんだ」――前回はそこで終わっていた。
※この記事は、第9話のネタバレを含みます。
キッチンバサミと、羊
今回はその続き。カズに家に上がるように言われたレイ。3人で話すことになる。
カズは、タキが男性編集者と親密にしていることにはある程度目をつぶっていたが、2人が抱き合っている様子を見てただごとではない関係だと気づく。
「セックスはしたのか」と聞き、レイは認める。カズはタキに「したくてしたの?」と問い、「はい」と認めさせる。
そこからカズは台所に行き、キッチンバサミを取り出す。「大切な羊を奪われた男が、その相手の耳を切り落とした話を本で読んだことがある」と言い、レイの前にハサミを置く。驚くレイ。「私は羊なの?」とタキ。「そうだよ。だから大事にしてきた」というカズの言葉に、怖くなった。
怒鳴る怖さではない。切るかどうかより、「切ってもいい位置に自分はいる」と見せている怖さだ。タキを大事にしてきた、という言葉の中身は愛情ではなく所有だったのではないか。
レイが「タキを人として見ていないんじゃないか」と言うと、カズは怒り出す。それを止めるために、タキは「お腹空かない?」と言ってごはんを作ることを提案する。急な展開にカズもレイも驚くが、タキのペースに乗っていく。レイはお茶を入れ、タキはチャーハンを作る。あっという間に出来上がり、3人で食卓を囲む。
いつものように「美味しい」と素直に言うレイと、何も言わないカズが対照的だった。この状況で食事を味わえる方がすごいと思う。普通は味しないよw
次回の雑誌のテーマを「おうち中華」にしようと言い出すレイに、カズは呆れて聞く。「あなた達、まだ一緒に仕事をするつもりなの?」タキも、まだ一緒に仕事を続けたいと言う。
不倫しておいてすごいことを言うなと思いながら見ていたら、カズが条件を出す。レイの配偶者に今回の出来事をまず共有すること。仕事のときはレイの妻・ミワコも入れて、4人がその場にいること。
旦那が不倫相手と料理を作るところを、その不倫相手のご主人と一緒に見守る。監視する。地獄絵図のような状況に、普通は身を置きたくないよね?
「ただ一緒にごはんを食べるだけでしょ」
家に帰ったレイがミワコに話すと、当然ブチギレる。ミワコ自身も職場の上司と不倫をしていて、それをレイに隠している。
夫の不倫を責める資格があるのか、という話にするとややこしい。でも本音はシンプルで、「やるならバレないようにやってくれ」なのだろう。
タキの家に行くことを渋っていたミワコだが、「こんな夫と不倫するバカ女の顔が見たくなったから行くわ」と了承する。
いよいよその日。下ごしらえをしていたタキが包丁を床に落とす。それを見ていたカズが言う。「緊張してるの? ただ一緒にごはんを食べるだけでしょ」ここで作品のタイトルが出てくる。
夫と不倫相手と、その妻と自分。この4人で囲む食卓なのに、「ただ食べるだけでしょ?」はないよね。
相手の恐怖を、タイトルどおりの言葉で無効化している。怒らない、別れない、条件を出す。感情が薄く見えるのに、主導権だけは手放さない。カズが一番怖い。
タキに別れてほしいと言われたのに、「タキのことは怒っていない。別れないよ」と言うのも、なんだかなと思う。不倫されてるんだから、怒れよ。
今までタキが心を込めて作った料理への無感動。不妊だから2人で病院に行こうと言われても、受け流してきたんだろう。
どうしてそんなに感情が死んでいるのか?
足りなかったのは、食事の回数ではない
タキとカズも、レイとミワコも、それぞれの夫婦でごはんを共有してきた。足りなかったのは回数ではない。そのごはんに何を求めているかが、夫婦の中で合っていなかった。
タキにとってごはんは、作る・味わう・認めてもらうことが愛情の形。カズにとっては、満腹になればいい。レイは手料理を通して家族の温度を感じたい。ミワコは効率で家庭を回せていればいい。
同じテーブルに座っていても、求めているものが違う。だから我慢して一緒にいた。
それがレイと出会って、タキは初めて、自分と同じ食事の感性を持った人に当たった。美味しいと言ってくれるだけじゃない。作り方、テーマ、次に何を食べたいかまで共有できる。だから引かれた。
恋愛の前に、まず感性の一致がある。
タキとレイの家庭像は近い。カズとミワコは、「満腹になればいい」の側で近い。組み合わせを入れ替えたら、少なくとも食卓のストレスは減りそうだ、と思ってしまう。
ただしカズとミワコが近いのは食事観だけで、他は合わなそう。カズには相手を所有物のように見ている怖さがある。ミワコには効率と自己保身がある。
レイとミワコには子どもがいるから、簡単に別れられる話ではないと思う。レイにとっては仕事も家族も絡むし、タキを選んだ瞬間に別の地獄が始まる可能性もあるから。
それでも、タキとカズは別れた方がいいと思う。子どももいないし。この先ずっと、カズの隣で「ただごはんを食べるだけ」を続けさせられる方が、怖い。
カズは不貞をしたわけでもなく、仕事はきちんとしている。それでも一番あり得ないのはカズだと思う。通して見ていて、ずっと怖さが取れなかった。
この先の4人の食卓は、2人をつないできた場を、監視と我慢の場に変えてしまう。
この4人が揃って一緒にごはんを食べるだけで済むはずがない。
番組情報
※本記事にはアフィリエイトリンクを含みます。
タイトル:一緒にごはんをたべるだけ
原作:大町テラス『一緒にごはんをたべるだけ』(講談社/「コミックDAYS」所載)
放送:テレビ東京 毎週木曜 深夜24:00〜24:30
2026年7月2日(木)スタート
※第9話「壊れかけた食卓とチャーハン」は2026年8月27日(木)深夜24:10〜24:40に放送
配信:TVerで見逃し配信。U-NEXTで見放題。
U-NEXTは初回31日間無料。無料期間後は有料です。
出演:
澤田タキ:早見あかり
斎藤レイ:伊藤健太郎
澤田カズ:桐山漣
斎藤ミワコ:岸明日香
ほか
電子版はKindleで読めます。
一緒にごはんをたべるだけ(1) Kindle版

